第13章 13
「着替えてからでもいい?」
「じゃあ俺は店で待ってっから」
そういって五条君はファミレスの方向へ歩き始める。
下戸で甘党の彼らしい店のチョイスは妙に安心出来る。
五条君は喋る時の声がデカいから大衆店の方が良いのだ。
「怒ってるかな」
着替えに30分近く掛かってしまったが、店内で先に待っていた五条君は激甘な紅茶を飲みながら私を迎えてくれた。
料理を注文せずに待っていてくれたのだ。
デリカシーはないが気が利かない訳ではない。
彼のそういう部分は気を遣わなくて良いので気楽だ。
「五条君」
「ん?」
「この指封印出来る?」
料理のページそっちのけでデザートページを舐めるように見ている五条君に問い掛ける。
なんやかんやで指輪は祓い切れないと言われてしまったのだ。
なら封印して貰うしかない。
私が夏油傑から自立する方法はそれしかないのだ。
「出来るけど、ソレ外したら傑がすっ飛んでくるぞ…」
「何で?」
「お前、傑の独占欲と嫉妬深さ舐めてるだろ
アイツ自制心は強くても隠してる感情はヘビー級だからな…」
少しだけトーンの落ちた声で五条君がぼやく。
超面倒臭いとでも言いたげなオーラが滲み出ている。
「全部終わったから平気だよ」
「やっぱり傑と会ってたのか」
「…」
メニュー越しに五条君が怖い顔をしている。
これが誘導尋問というやつなのだろうか…
妙に後ろめたい気持ちになってしまうのが悲しい。
まるでタブーを犯したかような雰囲気が漂う。
「アイツから会いに来たのか?」
「いきなり現れた
でも一方的じゃなくて双方合意の上で別々の選択をしたから大丈夫」
「あ?マジでそう思ってるの?
向こうは“別れよう”ってハッキリ言ったか?」
「…これ以上惨めになりたくないから私の方から別れようって切り出した」
「それで?
傑は分かれる事に合意したのか?」
「私の事残酷な女だって言って帰った」
「…それだけ?」
「うん」
「何か思わせぶりな事言ってただろ?」
五条君の鋭い目付き、声色、質問のコンボに固まる。
さすが親友…凄い。
恋愛トークでもマウント取れるのかよ…