第9章 家族
タケルが施設を出て数日が経った。
最近また忙しく、との時間がなかなか取れずにいた。
勿論、毎日連絡はしている。
然し、は明らかに元気がなかった。
そりゃそうだ、2年間育てた子供が居なくなっちまったんだ。
出来ることなら彼女の側に居てやりたい。
だから、さっさとこの山を片付けたいのだ。
ここ最近、ヨコハマでは子供を捕まえ、高額で海外に売り捌くといった事件が増えているのだ。
最悪なことにうちの名を語っているのだ。
うちはそんな卑怯なビジネスはしねぇ。
勝手にうちの名前を使ったことを許されるはずもなく、俺たちはその組織を解体するべく動いている。
樋口「これが今判る範囲での子供達のリストです。」
軽くの資料に目を通した時だ。
「ッ!!!」
1つの名前に目が止まった。
南條 タケル(9)
一瞬タケルではないかと思った。
俺はタケルの苗字を知らないので、不安が過った。
然し、が定期的にタケルの元へ通っている。
そんなことはない筈だ。
突然タケルが居なくなれば、もすぐ気付くだろう。
世の中同じ名前はごまんといるのだ。
ただの気のせいだろう。
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タケルくんが施設を出てからは定期的に彼の元へ顔を出していた。
戻ってから再び虐待されるケースが多いからだ。
今の所、タケルくんに変わった様子はなく元気に過ごしているようで安心している。
嬉しいことだけど、やはり寂しいものだ。
でも彼が決めたことだ。
私はタケルくんの幸せを第一にしないと!
そう自分に云い聞かせていた。
それに、毎日中也くんからのメールで元気をもらっている。
本当は逢いたいけど、そんな我儘云えない。
きっと逢いたいと云えば、彼は無理にでも時間を作って逢いに来てくれるだろう。
彼の負担になりたくないのだ。
目的地へついたタイミングで、携帯の通知音が鳴った。
手早く返信し、私はインターホンを鳴らした。
暫くすると女性が現れた。
??「先生、どうも!」
私も会釈をすると、女性は笑顔で家へと招き入れた。
その家の表札には南條と書かれていた。