第8章 甘いお仕置き
いつも飄々としている彼から出た言葉に一瞬時が止まった。
理由を聞くと、彼はゆっくりと話し始めた。
今日は仲の良かったご友人の命日らしいのだ。
目の前で死んでしまった彼を、何故助けることができなかったのかと後悔していると。
その友人から人を助ける人間になれと。
そう云われ、探偵社に入ったそうだ。
彼も私と同じだったのだ。
彼が苦手だと思ったのはもしかしたら、自分と同じだったからなのかもしれない。
パシっ
『ッ!!』
突然太宰くんに手を引かれ、抱き締められた。
太宰「今夜だけは1人になりたくない。」
消え入りそうな声、微かに震える身体。
彼の気持ちが痛いほど判る。
私は彼の背中に手を回した。
今日だけは彼を1人にさせてはいけない。
そう感じたのだ。
そしてこの夜、私は彼に抱かれた。
これがきっかけで付き合うなどはなかったし、身体だけの関係になることもなかった。
たった一度だけの関係だ。
それ以降は互いに今の距離を保っている。
相変わらず心中のお誘いはされるし、中也くんと付き合ってからも彼が目の前にいるにも関わらずお構いなしに口説いてもくる。
困ったもんだ。
やはり太宰くんの頭の中は判らない。
〜♪ バッグの中から音がした。
携帯の通知音だ。
相手は中也くんだった。
内容は仕事が早く終わったらから逢えないか?とのお誘いだ。
本当は逢いたいけど、先約は太宰くんだし、、、、。
仕方がなく予定があるとメッセージを送ろうとした時だ。
太宰「私に任せたまえ!」
パシッと携帯を太宰くんにとられ、何やらメッセージを勝手に送ってしまったのだ。
慌ててメッセージを確認すると特になんの変哲もない文章だった。
またしても太宰くんの謎の行動に着いていけずにいると、太宰くんに手を引かれた。