第13章 人魚姫
「此処は、、、、」
見覚えのある場所だった。
此処は彼女と出逢った場所だから、、、
人の気配は全くなく、心地良い波の音のみが聞こえていた。
結局は太宰に騙されただけか、、、。
「糞っ、どーやって出ればいいんだよ。」
周りを見渡すために、崖の上へ移動しようとした時だった。
〜♪、〜♪
歌声が聞こえた。
声が聞こえる方へと自然と足が向かった。
崖の端に女が立っていた。
後ろ姿しか見えねぇのに、女の顔が浮かんだ。
知らねぇ顔。でも、懐かしいのだ、、、。
それと同時に胸が熱くなった。
頭の中で流れる映像は、俺が知らないこと。
でも、これは俺の記憶だ、、、。
抜けていたピースが次第にはまっていった。
"中也くん、、、、"
"中也くん、大好きだよ、、、"
知っている、、、彼女のことを、、、
"さようなら、中也くん、、、"
あの時、手を掴むことができなかった悔しさ、後悔、絶望。
こんな大切なこと、忘れちまうなんて、、、、
なんて愚かなことをしたんだ。
俺は彼女の元へ走った。
「っ!!」