第12章 探し求めていた彼女
野村はかなり仕事ができる奴だった。
おかげで書類で埋め尽くされていた机はあっという間に片付けられた。
野村「中原幹部、お疲れ様です。」
「おお、さんきゅーな。」
野村からコーヒーを渡され、飲む。
いつもと同じ珈琲の筈なのに、やけに美味く感じた。
「美味ぇな。豆変えたか?」
野村「ふふ、ありがとうございます。いえ、変えてませんよ。淹れ方ですかね?」
「淹れ方で変わるもんなんだなぁ」
野村「そう云って頂けて嬉しいです。」
野村は微笑んだ。
なんとなく彼女の微笑む顔が、と似ている気がした。
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無事書類も片付き、息抜きに煙草を吸おうと屋上へ上がった時だった。
〜♪、〜♪
歌声が聞こえた瞬間、身体が勝手に動いた。
あの時の歌声だったからだ。
そして、ついに見つけたのだ。
歌声の主を、、、、、
その人物は
「野村、、、、?」
俺が突然声をかけたこともあり、野村はかなり驚いていた。
野村「す、すみません!」
「いや、悪い。その歌って、、、、」
野村「えっ?」
「手前、7年前に海辺で、、、、」
俺の言葉に野村は目を大きく見開いた。
野村「もしかして、、、」
彼女の言葉に確信を持った。
野村だったのだ、あの時俺を救ってくれたのは、、、。
「あの時は本当に助かった。礼を云うのが遅くなってすまなかった。」
野村「善かった、、、無事で、、、。」
野村の話によれば、彼女は俺を助けたあとすぐに海外に行ったそうだ。
俺から逃げたのはただ単に恥ずかしかったかららしい。
ポートマフィアへ来たのは、会社が倒産し、多額の借金を背負った両親の為だそうだ。
野村「まさかそんなに探してくださったなんて、、、。」
「礼を云えてなかったからな。」
野村「私もずっと気になってたんです。だから再会できて凄く嬉しいです。」
「これもなんかの縁だ。これからも宜しくな!」
野村「はい、宜しくお願いします!」
こうして、無事探し求めていた彼女に再会することができたのだ。
あの胸の高鳴りは本能的に彼女だと感じたからだろうと1人で納得した。