第1章 開口一番
「優しいのは私?」
ふざけて聞くと、案の定面白いものを見つけたように好奇心に輝く目を私に向けた。
「優しいのは、誰だろうね?君か?俺か?優しいの定義によって、人は誰が優しいかを決めるんだ。自分にしかわからないだろう。」
「臨也は?」
「ここはあえて、君だ。」
イスに座り、互いに向かい合う。私の答えを待つ間合いがあり、ゆっくりと口を開いた。
「ならば、臨也と言っておく。今はね。」
カップ越しにため息をつき、つれないなぁ、とこぼす彼の姿が見えた。
大抵の人はそう言われると、恥ずかしがって貴方ですと答えるかもしくは知り合いの名前を次々に出しまくるか。しかし、彼の前でそのようなことをするのは愚行だ。
「後で変わるから。でも、もしかしたら変わらないかもしれない。答えは知らない。」
「見事な回答だよ、マリア。君は本当に面白い人だね。いや、人じゃないから面白いのかな?いずれにせよ、俺は君がお気に入りさ。」