第4章 衣香襟影
その言葉にセルティがハッと目に分かるほど反応したからそれがアイルランド語であるとわかった。
つまり、これもアイルランドからやってきた、人でないもの。
急いで打ち直すセルティに再びそれは先ほどよりもはっきりした声でしゃべった。
「Chuala mé」
じっと数秒が経過した。何を言ったのか教えてくれというとセルティはPDAを見せた。
『聞こえてるよ、といったんだ。彼女には、私の声が聞こえている。』
「声?聞こえようにも君には声なんて無いじゃないか。」
やっぱりそれは人じゃなかったんだよ。セルティの声が聞こえるということは同じこの世に唯一具現化した妖精。俺は幸運だな。
生憎それは自分でシャワーぐらい浴びれると言ったのでさっさとバスルームに着替え用の俺の服と一緒に押し込めてやった。優秀な運び屋さんはその間にそれに必要な最低限の生活用品を買ってくるから金をくれと要求してきた。
「なんでさ。タダでやるっていったくせに。」
『お前は彼女を引き取るのだろう。お前が連れてきた癖に。』
「冗談だよ。」
いくらか渡して俺はやっと一人でゆっくり考えることができた。アイルランドからきた、人でない妖精かなにか。しかし、言葉が通じないとなるとこの先長そうだ。だが、面白いおもちゃを手に入れたんだ、それぐらい辛抱しよう。