第1章 開口一番
胸が悪くなるようなその笑い顔も私には慣れっこだ。静かに受け止め何も言わずに部屋を出る。彼の視線が私についてくるのも、彼が何を思っているのかも手に取るように分かる。
大方、「興味が尽きない存在。」だとか何とか思っているのだろう。
部屋中のカーテンを開けて日光を取り入れる。陽の光はなぜだかわからないが、自分に力を与えてくれるような気がして好きだ。夜には月の光。
「今日の予定は?」
後ろを振り返りそう聞くと、その日の彼の答えは意外なものだった。
「今日は一日中此処にいるつもりだよ。ゲームがそろそろ終わりそうだ。だから、今日は遊休だ、マリア。」
カップを片手にそう告げる彼の目はどこか楽しみにとっておいた食べ物をやっと食べられる、と言わんばかりに笑っていた。
その時私は気が付いていなかった。ゲームの終わり、ではなく、ゲームは既に始まりの章を終わったばかりだということを。いや、もしかしたら気付いていたのかもしれない。なにが始まりで何が終わりか。