第3章 跳梁跋扈
息を整える正臣を振り返る。
「…あ、ありがとうございます。でもいいんですか?臨也さんにばれたら…」
臨也にばれたらきっと正臣はまた、駒としてひどい扱いを受けるだろう。だからこそ、私は正臣を連れて走ったのだ。
「今頃どこかで違うことで楽しんでるから。」
日は暮れはじめ、ビルの隙間に真っ赤な太陽が覗いている。
「それに、一人で勝手に逃げたんだから文句は言わせない。」
「…やっぱり帝人に教えるべきだったわ。一番敵に回しちゃいけないのはマリアさんだって。」
笑いながらいう正臣に首をかしげる。
「あの、これ持っててください。お礼ちゃんと言えてなかったし…」
正臣が私の手に置いたのは、小さくて可愛らしいストラップ。繊細な月や蝶の模様があしらわれた何気ないそれを、じっと見つめた。
「ありがとう。」
「いえ…こんなことしかできないっすから。では、また!今度こそお茶のお誘い忘れないでくださいよー!!」
照れ隠しなのか正臣は走り出し、最後そう言い残すと家へと帰って行った。手の中のストラップをポケットに入れて、私もまた歩きだした。
近くの木から、雀の鳴き声が二つ三つ聞こえた。