第3章 跳梁跋扈
恐怖を前に人は冷静な判断力を失う。
一人が叫び声をあげながら手にした木の棒で静雄の頭を殴った。
突然の出来事に誰も動けるものは居ず、ただ静雄の怒りの声が低く聞こえていた。
「お前今、頭狙ったな…うちどころが悪けりゃ死んじまうって分かってるよなぁ?分かっててやったってことは殺す気だったってことだよなぁ?じゃぁ、何をされても文句はねぇよなぁ?」
言うが早く静雄を殴った男は静雄に殴り飛ばされた。
始まってしまった殴り合いの騒動の中、不意に肩を掴まれ何事かと首をかしげると臨也は耳元で素早く言った。
「適当に、ばれないようにね。」
影武者よろしくとばかりに満面の笑みをたたえて逃げていく彼の背中を嫌みたっぷりに睨みつける。
それに気付いた静雄が、今度は自販機を持ち上げると投げつけた。事もあろうに、それは私の方へ向かってくる。
顔を腕で覆い身構えるも、どこから現れたのかサイモンがそれを受け止めていた。
「サイモンてめぇ…」
「静雄!喧嘩良くないネ!」
そういえばと帝人や正臣のことを思い出し横を見ると、帝人は一緒にいた眼鏡の女の子を連れて走り出していた。サイモンと静雄がにらみ合っている今、逃げるのは今しかない。
とっさに私は正臣の腕をつかみ、すまないが帝人とは逆の方へ走り出した。
「え?!あ、ちょ…あ、マリアさん!」
------------------------
数分走ったところで私は立ち止まった。ここまで来てしまえば、怪我もしなくて済むだろう。