第2章 一虚一実
「ごらん。どんな悩みがあろうがいまや皆ただのシミだよ。シミ。例外なく誰でも、神の下に平等に…」
言葉なんて遠くに聞こえる。不安定な体制と、眼下に見える元は人間であったシミ。恐ろしさ以外の何物でもない感覚が全身を支配する。
「離してあげよう。」
目の前に迫った落下、死というものになすすべもない。そう思った時掴まれていた腕が引っ張られ自分は立っていた。
「ほらね。ま、今日一日君の気持ちが無様に揺れ動いたのを見られただけでよかったよ。俺が本当に興味あるのは君のお悩みとかじゃないからさ。悩んでる君の生態だから。」
階段を上り出口へと戻りながら彼はいけしゃあしゃあと語った。手招きをされマリアも同じく後に続く。
「ついでにいうと、君の生態は予定通りで退屈だったよ。最初から死ぬ気ないのはわかってたからね。それじゃぁね!楽しかったよ、マゼンダさん。」