第2章 一虚一実
「どういうこと…?」
あまりの現実に少女は頭を混乱させる。自分を拉致するように言った人と助けるように言った人が同一人物。
わけのわからない行動と、得体のしれぬ不気味さに冷や汗が出る。
見透かしたように男は続ける。
「死のうと思っていたのに拉致なんかされちゃってここでビビってる自分は何なんだろうかと思ってちょっと悔しい、とか思ったりして、でも抵抗したら死のうとしていた自分を否定することになるからここは運命だと思って素直に受け入れたりしようとしてでもいざ助けられたらほっとしちゃったりとかしてる。そんな、君の顔が見たかったから。」
柵に寄りかかり振り返ってこちらを見つめる目は不気味そのもので悪寒が走る。マリアはどこを見ているのか分からないような目で少女を見つめていた。
よくもまぁ、こんなに口が回るものだ。
「一言で言うと全て見透かされちゃって絶句してる君の顔が見たかったから。」