第2章 一虚一実
たどり着いた場所はとある廃屋ビル。扉には太い鎖と南京錠がかけられ容易には中には入れない。
「これ、切ってよ。」
太い鎖を指し示されそれをじっと見つめた。
風が強く吹きそれが手元に集まるかのような感覚に陥る。どこからともなく現れた透明の刀を両手で握り振り上げると、頑丈な鎖が真っ二つにきれ、ガチャンっという音と共に扉が少しかしいだ。
中に入るとカビ臭いにおいとギシギシ軋む音が反響して何とも言えない恐ろしさを醸し出す。気にせずに中へ進む臨也の袖を急いで掴むと、私もまた中へと消えて行った。
「なんで怖がるのかな?俺達からみたらマリアもお化けと同じようなものじゃないか。」
確かにそうだけど、化け物にだって怖いものくらいはある。と心の中で猛烈に抗議する。自然的なもの、例えば動物や風や木、水などはまったく怖くない、むしろ友達のように接することができるが、人間や自然的でない物は心底怖い。それは、森の精であるバンシーならでは。
ここにも鍵が付いていた。それを壊し階段の先にあるドアを開けるとさぁっと風が吹き抜けた。肌寒い夜。下の方は街の明かりで温かみを持っている。