第1章 開口一番
やっとセルティから解放され、お皿に盛られたクッキーを一つつまむ。それぞれがイスに座り他愛もない話に花を咲かせていると、一つの噂話にたどり着いた。
「自殺オフ?」
ネットで知り合った同じような境遇の人と、オフ会がてらに心中という事件が最近多発している。そして謎の失踪事件も。
「マリアは勿論、裏を知ってるよね。」
「うん。」
『それで、今日もその後始末ってわけか。』
「人使いが荒いんだかなんだか。けど、今回も100%それだね。」
『正直もう関わりたくない。』
うなだれる様子のセルティ。彼女の仕事は運び屋。情報屋の私たちはよく彼女に依頼を頼んでいる。しかし、それは裏を見てしまった者にしか分からない暗闇が潜んでいる。
彼が自殺願望の人をネットで探し自殺オフを持ちかけていることは知っている。
『マリア、もうやめよう。アイツのそばにいるのは良くない。』
心配してくれているその気持ちがとっても嬉しかった、が、私は頭を横に振った。新羅は何を言ってもダメだよ、という顔をしている。
「…良くない、けど、あそこにいれば泣かなくて済むって臨也は言った。」
『それは…だが、あいつは人を殺しかけない。』
つかの間の沈黙。空気を変えたのは誰であろう新羅。新羅は何か言葉の裏に隠し事をしてるかのようだった。
「心配ないよセルティ。マリアは信頼を抱いてるんだ。それに、僕も彼に信頼を抱いている。いざというときは逃げられるさ。マリアは子供じゃないし。」
『…まだ、幼いうちに入るだろう。』
「気付いてないとことかね。」
二人の会話に私は首をかしげるだけ。一体なんのことなのか。
私が臨也のもとにいる理由は、なんとなく流れに沿ってそうなった、としかいいようがない。故に、余計訳が分からなかった。