第1章 開口一番
セルティ・ストゥルルソン。
彼女には首がない。池袋の生きた都市伝説、首無しライダー。
セルティは新羅の後に部屋に入ってきた私に気付くとPDAを差し出した。耳に当てると何故か彼の声が。
―今夜ちょっと手伝ってほしいんだけど。君の遊休を取り消すつもりはないよ、昼間は存分に遊んでくれて構わない。困ったらいつでも電話すればいい、君の居場所はすぐに分かることぐらい知っているだろう?―
ゆっくりと、手が首元に伸びる。そこにつけられたのは、黒いチョーカー。
―で、俺もそっちへいくから夜には外に出てほしいんだ。セルティちゃんに君を運ぶように行ったから。―
そこでぷつっと切れ、PDAをセルティに返す。
「彼は君を手放すつもりは毛頭ないみたいだね。コーヒーと紅茶どっちがいい?あ、マリアはコーヒー飲めないんだっけ?」
笑いながらキッチンへ向かう新羅。セルティはPDAをしまう。
『いらっしゃい。ゆっくりしてって。』
「しかし、君は本当に面白い。僕なんかセルティの声聞いたことないのに君にはどうして聞こえるんだ?どんな声?なんて言ったの?解剖したいくらい興味深いよ!」
カップを三つテーブルに置き身を乗り出すようにして目を輝かせた。とたんにセルティが私に抱きつき急いでPDAに指を走らすと画面を新羅につきだす。
『ダメだ!マリアを解剖なんて!!そんな恐ろしいことさせるわけないじゃないか!!』
「冗談だよセルティ。悪かったって。」
『新羅が言うと冗談に聞こえない!』
「え!酷くない?!ただの好奇心さ!」
『とにかく解剖はダメ!!』