第14章 ニセモノのやり方 ✢
蜂楽が入った湯船に浸かるだけでも、ドキドキ。
それでも温かいお湯は、その興奮も疲れも徐々に治めてくれる。
「(本当に、色々あったな…。)」
蜂楽と私は両想いだけど。
本当の、彼氏彼女の関係ではない。
もう本当の恋人になって、いっそ最後まで抱かれたいって、正直思ってはいる。
でも、この関係って?
今後はプラトニックな関係を保持するのかな?
いや、それはないか。
今さっきも耳、攻められて……。
またこれから……
どんどんオプション追加されていく、とか?
“行為”のボーダーラインが、判らない。
“本当の恋人同士になれるまで……
夢ちゃんのコト、待ってる。”
でもさっきの言葉が、私を変えてくれる気がする。
まだ、自分のこと信じて良いんだって思える。
今は少しずつだけど、確実に前に進めてる。
私は蜂楽のように、自由になりたい。
失敗を恐れず、自分を貫ける強さが欲しい。
強くならないと、蜂楽に見合う恋人になんてなれないって解るから……
この“鉄の首輪”を完全に壊すまでは……
“ニセ彼女”が……私の場所かな。
「蜂楽、ありがとう。」
お風呂の中で、小さく小さく呟いた。
蜂楽と出逢ってなければ、私は自分を取り戻そうとはしてなかった。
このまま親の思うがままに医学部に進学して、
一生、自分に嘘をついて生きることになっていた。
「(蜂楽、お腹すいてるよね。)」
夕飯のことが気になって、湯船から出る。
念のため鍵を掛けたお風呂のドアを解錠して、
脱衣室に出た瞬間だった。
「やっほー♪また会えたね♡」
…………
……なんで……!!??