第7章 敵
「ヴォォオオオ……」
「あれなぁに、メン?」
不気味な声を発した何かを見ながらミウが聞いてきた。
俺も何かは分からねぇ。だが、色が灰色以外はよーく見たことがある。
あのゲームの世界にいるゾンビだ。
しかも四角いゾンビではなく、かなりリアルなゾンビだった。ちょっとというか、かなりおっかない見た目をしていた。
俺は辺りを見回して考えた。こんな密室でどう戦えと? 武器もないのに? ミウも庇いながら?
いや、ミウは傷つかない少女だったんだと思い出して俺の良心が引き止める。まさか、ミウを盾にすることは出来ない。ミウが怖がって悲鳴を上げたり暴れたりしないのが唯一の救いではあるが。
「よし、こっち来るんだ、ミウ」
「うん!」
とにかく俺は、ミウとはぐれないように抱えてゾンビから離れる。幸いゾンビの動きは遅い。肩車は体勢が安定しないのでやらなかったが、ミウもそこまでワガママを言う程空気が読めない訳ではなさそうだ。
今のところゾンビは一体しかいないが、ここで俺が自爆して一体倒したとしても更に悪いことが起きる予感がした。だってここは試練の間だろ? 色んなゲームをしてきた俺からしたら、不安でしかないのだ。
「メン、アレにぶつかったら痛い?」
近づいてくるゾンビを指しながらミウが聞いてきた。当たり前でしょ、と言いたくなったがグッと堪える。ミウには痛みというものが分からないのだ。
「ああ、多分痛い。俺が痛い目遭うから、ここからなんとか脱出しないといけない」
俺が正直に答えると、じゃあ、とミウが天井を指した。