• テキストサイズ

TNTになった俺と傷つかない少女2

第6章 恐怖


 こじ開けた扉の先には、よくあるゲームの障がい物。
 灰色っぽい真っ直ぐの一本道に、大鎌が左右に揺れているアレだ。それがいくつも設置してあって、道の外側は針山地獄の穴となっていた。どう見ても生身の人間が通るところではない。だが、他に道があるようには見えなかった。
「ここは僕たちの出番だな、ミカエル」
「ええ、そうね」
 と前に出たのはサムットとミカエル。何をするのかは俺にはさっぱりだが、特殊な体質や不思議な力を使うミウの両親だ。何か二人にも不思議な力があるのだと思う。
「メンさん、ミウを連れてこの道をただ真っ直ぐと走り抜けて下さい」とサムットが言う。「あの刃物は、僕たちが止めるので」
「それはいいんすけど……何するんです?」
「カンフーンで止めます」
「え」
 今なんて言った? カンフーン? カンフーじゃなくて?
「ねぇ、メン〜、肩車して〜」
 俺の頭が理解に追いつかないところに、ミウのワガママが入ってくる。いやいや、今ここで肩車をしている場合ではない。
「ミウ、ワガママはやめなさい」
「え〜」
 サムットの一言でミウは不満そうな顔をする。ここから先が思いやられそうだ。
「ごめんなさい、メンさん」と謝ってきたのはミカエルだ。「ミウは生まれつき、傷つかない体質でして。恐怖に対して鈍感なんです」
「恐怖に……」
 それは、聞いただけだと誰もか欲しがる能力だ。恐怖に打ち勝つには痛みを知らなければいい。だがそれは恐怖を知っているからそう思うだけだ。痛みを知らないと恐怖に鈍くなるとは、人間そう上手くはいかない。
「よし、肩車すっか!」
 なら俺は何をするべきなのか。正解は分からないが、今の俺が出来ることはそれしかないと思った。
「うん!」
 ぱっと明るくなったミウの顔を、とても久しぶりに見た気がした。そうか、今まで笑っていなかったんだな。
「すみません……」
「いえ、大丈夫っすよ」
 申し訳なさそうに頭を下げるミカエルに俺は出来るだけ軽い口調で言ってミウを肩車する。
「わぁ、メンの肩車だ〜!」
 キャッキャッと騒ぐミウ。最初ミウと会った時もこんな感じだったな。
/ 54ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp