第26章 目的地
「ノーと言ったら?」
俺は質問返しをした。
「こうするのみだ!」
そう声をあげるなり、突如目の前から髪薄じぃさんが消えた。マズイ、と思って身を引いた瞬間、じぃさんの蹴りが飛んできてぎょっとした。直感でかわしたが、数瞬反応が遅れていたら俺は蹴られていただろう。
「今から白旗あげても許さないからな……!」
と言いながらこちらを振り向いた時には、もうソイツは髪薄じぃさんではなくなっていた。筋肉バリバリのボサボサ剛毛を生やしたデカイじぃさんに変化していたのだ。
「お前の骨すら粉々にしてくれよう……」髪薄じぃさんから筋肉じぃさんになったソイツが言う。「我が名はクリスタ一家を百年も治めて来た里長のハルバルトだ。あの世の手土産に覚えておけ」
「……っ!」
俺の返事なんて待ってはいない。筋肉じぃさんは足元を殴りかかり、俺はすんでのところで飛び跳ねたが、地面が抉れて瓦礫が散らばった。俺はミウの目に土埃が入らないように腕で覆ったが、俺の視界は真っ暗だ。
「戦闘も全く出来ない癖によく大口を叩いたな!」筋肉じぃさんはよく喋った。「だがここまで反抗的だった若者も久しいからな……今回は特別にじっくり痛ぶってやっても……」
ドゴーン……!
その時、何かが俺たちの間に割って入ってきた。