第25章 目指すは
「え……」
ミウはそれを最後に、大人しくなった。
ミウはまだ子どもだ。俺が言っていることに困惑を示すのも無理はないと思う。
俺はミウを抱えたまま高く高く空気中を吹き飛ばされていたが、クリスタみたいなものは見当たらない。俺はミウに訊ねた。
「ミウ、クリスタはどこだ?!」返事がない。「ミウ?」
と俺がミウを見やると、無視している訳ではないと分かった。ミウはまだ、上を指していたのだ。
「まだ上?!」
「だって……」
「あー、分かった分かった。まだ上だな」
また泣かれたら面倒だから、俺は適当に言葉を流した。俯くように頷いたミウが見えた。
しかしどうしたものか。絶賛吹き飛ばされ中の俺たちは、徐々にそのスピードを緩めていた。このままだと俺たちは落ちてしまうだろう。
俺は辺りを見回して考えた。周りには白い球体があちこちに浮いていて、本当に異世界感がある景色ばかりだ。
俺が出来ることといえば……自爆すること。ミウは動いているものや人間を動かす力はないらしいから、俺がなんとかしないといけなさそうだ。
あ。
その時俺はあることを思いついてミウに訊いてみた。
「ミウ、あの丸いのは動かせるのか?」
「丸いの?」
「そ、あれあれ」
「こんな感じ?」
「ちょちょちょ、まだまだ!」
「ん……?」
そうして俺は、ミウの力で足元によく分からん球体を動かしてもらった。あとは俺がそこに着地するだけ。
「あとこれ持ってくれるか、ミウ」
「分かった」
俺はミウにクリスタを渡して置いた。クリスタはいつの間にか俺の手中にあったが、今は手放さなくてはいけない。俺は爆発しなくちゃいけないからだ。
トンッと地面に軽く足がつく程度の軽い衝撃だった。だが今の俺にとっては自爆するには充分過ぎる衝撃だ。俺はしっかりとミウを抱えた。
「しっかり捕まってろよ!」
「うん!」
ドガーン! と鼓膜が破れる程の爆発音と共に俺は自爆した。体が吹き飛ぶ。目指すは、空高くだ。