第24章 夢のような
「ミウ……!」
「なぁに、メン?」
がばりと起き上がると、白と灰色の世界が視界に飛び込む。
また試練の間とやらに戻されたのかと思ったところで、傍らのミウを見やる。茶髪混じりの黒い髪を、ショートカットにした少女がそこにいる。大人にはなってはいない。
「俺は……」
「メンさん、危ない!」
「は?!」
どうやらゆっくり考えている場合ではないようである。俺に向かって何かが飛び込んで来て、咄嗟の判断でかがんでかわす。……見るとデカイ斧が壁に突き刺さっていた。
すかさず俺は振り向いて状況を理解しようとする。そこにはサムットとミカエルが戦闘の構えをしていて、誰かと戦っていたのだ。何事かと寝惚ける頭を振り払って俺は考えた。
あの時の村長だ!
「おのれ、サムットにミカエル! 里を抜けただけでなく、シキタリを破るというのか!」
このじぃさん、ただのじぃさんではない……。サムットとミカエルの方が明らかに若くて素早いはずが、じぃさんも負けず劣らず……というか圧倒するような手捌き足捌きで確実に急所を狙って動いている。これがカンフーンなのか……これがクリスタ一家なのか……!
「メンさん、説明している時間はないんだ!」
「ミウを連れて、ここから逃げて下さい!」
とサムットとミカエルが代わる代わるに言い、俺はよっしゃあと立ち上がってミウを立たせようとした。だがミウは、ふにゃりとまるで猫みたいな動きで俺の腕からすり抜けて何度も首を降った。