第21章 絡み合う陰謀
「それにしても、どうしてサムットたちが出て行ったことがこんなに早く知れ渡ったんだ……?」とユウジンの独り言は続く。「身代わりの幻影は作っていたのになんで……」
と話しているところで俺はミウを抱えたまま歩き出した。サムットとミカエルが歩き始めたからだ。
「村長の後を追います」
「もしかしたら、村長が私たちを……?」
二人は、自分たちをこんな罠にはめたのが誰なのかが気になっている様子だった。話を聞く限り、ユウジンを問い詰めていた老人が村長のようだが、俺にはまだ分からないことが多くあった。
「……シキタリって、なんです?」
俺は慎重に言葉を選びながら問いただした。それはミウには聞かせられないことなのか、俺はチラリとミウを見る。ミウは相変わらず、不安げな顔だ。
「それは……」
サムットは言いたがらなかった。そのことから俺は察した。最低なことなのだろう。俺は言わなくていい、と言おうとしてミカエルが話を続けた。
「神様の力を持って生まれた子どもは、クリスタ一家をまとめる長として、厳しい苦行をさせるんです」ミカエルの眉間に皺が寄る。「みんな誰もが知っている決まり事でした。でもまさか、何をしても傷つかない人間がいるなんてほとんどの人は信じていなかったんです……おとぎ話だって」
ミカエルは口をつぐんだ。もうそれ以上は語る必要もないだろう。ミウがぎゅっと、俺の首に腕を回してより強く抱きついてきた。
「ここが村長の家です」
一番前を歩いていたサムットがそう言ってこちらを振り向いた。村長の家は、他の住居と同じく壁に掘った穴にあるようなもので、そこに先程の老人が向かうのかと思いきや通り過ぎ、ある場所へと向かった。
「まさか……クリスタの場所?」
俺が呟いた通り、老人……村長は、ミウが最初に指し示した長い長い階段を上がって行った。もしかしてこの先に、何かしらの秘密があるのではないだろうか。
「行こう」
「でもミウが……」
サムットの言葉に、ミカエルは心配そうに俺が抱えているミウの方を振り返った。そうか。この先に向かうと、ミウが知りたくないことも知ってしまうのかもしれない。ミウはまだ六歳のはずだ。こんな子どもに、それら全てを背負わせると?