第21章 絡み合う陰謀
「おい、どういうことだ、ユウジン!」
俺たちがユウジンの家の前まで来るなり、そんな叫び声が聞こえた。俺は咄嗟にミウの両耳を塞いだ。
「そんなこと言ったって……! オレだって分かんないよ!」
と気弱そうな返しをした男性が、窓の隙間からチラリと見えた。細身の男性で、見るからにやつれていた。どういうことだろうとサムットとミカエルへ目を向ける間もなく、更なる怒号が飛んだ。
「お前はサムットと仲良かっただろ! 神様の生まれ変わりをどこに連れ出したのか知らないというのか、ユウジン!」
「だから知らないって! 仲良くても、あの二人がオレに教える訳ないだろ……!」
どうやら怒鳴られている細身の男性の方がユウジンのようだ。今のところ、ユウジンがサムットとミカエルの話をしている様子はない。
間もなく、話が終わってユウジンと話していた老人が出てきた。やはり俺たちのことは見えていないようで、俺たちの体をすり抜けて老人は立ち去って行った。
「あの人はだぁれ?」
耳を塞ぐのをやめると、ミウがすぐに聞いてきた。俺は答える代わりにサムットとミカエルを交互に見やった。
「あの人はパパとママの友達なの」
とミカエルは答えたが、顔はずっとユウジン宅の窓に向けられていた。サムットに至っては口を真一文字に結んでいて表情が硬い。
「はぁ……嫌なじぃさんだな……」自宅に取り残されたユウジンが、頭を垂れてそう呟くのが聞こえた。「どうにか遠くに逃げてくれよ、サムット、ミカエル……こんなシキタリは間違ってるからな」
俺はサムットとミカエルをもう一度見やった。俺は二人の表情が少し柔らかくなっていることに気づいた。どうやら、悪役はユウジンではないらしい。