第3章 石版
「どうやらここは、そこにある石版の通りみたいです」
「え」
とミウの母、ミカエルに言われて振り向くと、そこには大きな石版が佇んでいた。石版には彫刻で文字が彫ってあるが、どう読んでも読めない文字だ。一見漢字に見えるのだが、明らかに日本語や旧字体でもなさそうな文字がいくつも並んでいる。
「石版の文字、俺には読めないんですが、なんて書いてあるんです?」
ここは素直に教えてもらおうと二人に訊ねると、今度はミウの父のサムットが答えてくれた。
「ここは試練の間。我らの世界を救う者だけがここを無事に出られる」
「試練の間……?」
なんで異世界に来て突然試練の間に飛ばされるんだ。ここは普通にヒーローや勇者として選ばれるのが王道だろうがとツッコミたくなるが、グッと抑える。前に異世界に飛ばされた時も散々な始まり方だったのはよく覚えているからだ。
「私たちの世界には、ある不思議な話があるのです」とミカエルが話す。「私たちの世界と密接に繋がっている別世界は常に不安定で、助けてもらうために異世界から誰かを呼び込むと……」
「そんな話が……」
信じられる訳がないが実際俺がここにいるというのが証明なのだろう。俺はなんとか納得する。