第17章 帰宅……?
そうしている内に、クリスタがあった部屋に着いた。やはりどう見ても何もない部屋だ。ここは本当に、クリスタを置くためだけの場所だったのだろうか。
と考えている間に、サムットとミカエルは何かしらの動きをしてポータルを作り始めた。前に見た時と同じ動きだ。どう見てもカンフーみたいな動きで、二人は部屋の真ん中に真っ黒なポータルを開いた。
「メン……」
ミウはすっかり大人しくなり、俺の裾を掴んできた。それ以上は何も言ってこない。
「どうぞ、メンさん」
とミカエルに言われ、どうやら俺はそのポータルに入るしかないようだ。
俺はミウへ視線を落とす。最後の別れかもしれない時に、ミウになんて言ったらいいか分からねぇ。てかこの掴んでる手をどうやって離したらいいんだよ?
「あのな、ミウ……」
俺がしゃがむと自然とミウの手が離れた。ミウの泣き腫れた真っ赤な顔がよく見えた。今は全く泣かないまま、じっとこちらを見つめている。
「ねぇ、メン……」
とミウが話し出した瞬間だった。床が大きく揺れ始め、俺は咄嗟にミウを庇って倒れた。見るとサムットとミカエルも倒れている。二人の間に作られたポータルがぐにゃりと歪んだ。
「メンさん、早く入るんだ!」
「メンさん、早く入って!」
サムットとミカエルがそう叫ぶのが聞こえた。そう言われても……! 立つことすらままならないこの状態でポータルに近づくことも、ふらついて倒れたままのミウを放って置くことも出来ず、俺たちは崩れた床の真下へと、真っ逆さまに落ちて行った──。