第17章 帰宅……?
白と灰色の廊下に出て、サムットとミカエルは代わる代わるにクリスタの話をした。
クリスタ一家は自分と同じクリスタがあるとそこに近づけないので、自分と真反対のクリスタを置いて力が弱まるところ……つまり絶縁体のような空間が必要ということらしかった。
サムットとミカエルはこの空間に来てから本来の力の半分程しか発揮出来ていなかったらしい。だがクリスタがあった場所なら、絶縁体状態になっているはずとのことでその部屋へ向かっていたが、ミウは不機嫌だった。
「えー、メンもう帰っちゃうのー?」
と駄々を捏ねて床に倒れ込むから、サムットが仕方なくミウを抱えて進むこととなった。ワガママを言って暴れるところは、変わってないみたいだ。
俺も、もう帰れるのか、という実感がなかったのも事実だった。
正直、どこか知らない世界の危機とか、クリスタ一家について興味はない。むしろ俺がいたらますます状態が悪化するだけだ。俺がTNTである以上は。
だが、疑問はいくつも残る。もし、これがクリスタ一家の争いのきっかけなら、なぜ俺が巻き込まれたのか。ミウたちのいる世界と、俺のいる世界は全く別の異世界同士だ。一見すると関係はない。そうなると、俺は……。
「あの、一つ聞いていいっすか?」俺は二人に質問を投げかける。「ミウには、時間操作をする能力があるんです?」
二人は足を止め、俺の方を見やる。それからお互い見つめ合って、まずはミカエルが答えた。
「それは分かりません。もし、ミウが使っていたとしても、気づくのは難しいと思いますし……」
「もしかしたら、僕と妻が異世界へのポータルを開けるように、黄と緑のクリスタの力を同時に使うと、時間操作の能力は使えるようになるのかもしれません」
とサムットも言っているところ、時間が巻き戻ったことを、二人は少しも気づいていないみたいだった。ミウは泣きじゃくって何か言う様子もない。