第12章 ひとときからの
「ミウの力って……」
「二人とも、伏せろ!」
前を歩いていたサムットが、急に叫んでこちらに飛び込んできた。俺も咄嗟にその場でしゃがんだが、三人がどうなったのかよく分からなかった。
ただ、次の瞬間目の前から爆発音が響き、体が吹き飛ばされた。直後俺も自爆して、何もない真っ白な空間をグルグルと吹き飛ばされていたところに、グイッと何かに引っ張られた。
「大丈夫か?!」
サムットの姿だった。
サムットは片手にミウ、もう片手に俺を掴んでいたが、ミカエルの姿がない。俺はミカエルを探した。するといつの間にか起きていたらしいミウの声が空気を割いた。
「ママ!」
そうミウが指す方向に、確かにミカエルがいた。だがミカエルはぐったりとした様子で空中に浮いている丸い物体の上に倒れている。サムットは歯を食いしばって空中を蹴った。俺は今信じられない光景を目の当たりにしている。この人、空気歩行技使ってんじゃん!
まさか漫画で見たシーンをこんな間近で見られるなんて、という感動はさて置いて、ミカエルは意識がないようで、丸い物体からズリ落ちようとしていた。掴まっているだけの俺は見守ることしか出来ないがここからちょっと遠い気がした。
……俺がここで爆風を起こしたらもっと早く着くのではないか?
しかし、どうやって自爆するか問題にぶち当たり、考えた結果俺はサムットから離れようと思い立ったが、どうやらそれは見抜かれていたみたいだ。
「離しませんよ、メンさん」
サムットの低い声はドスが効いていた。そうなのか。いくら傷つかなくても大事に抱えるのはミウだけではないのか。例え俺が自爆したら元通りになると知っていても、この人は……いいや、だからこそ彼らがミウの両親だったのだと思うと本当に尊敬でしかない。
「ミカエル!」
その時、サムットが唐突に叫んだ。ミカエルがとうとう、丸い物体からズリ落ちてしまっていた。下がどれくらいあるのか分からないくらい真っ白な空間だ。間に合ってくれ、と祈るしかない俺。サムットの手が伸びた……。
「ママー!!!!」