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恋人設定(仮)

第9章 写真


次の朝、いつものように彼は公園で私の登校を待っていた。

私はシカトしてダッシュで通り過ぎた。



昨日、家に帰ってもう一度あの写真を見た。

キスしてる私。

彼の瞳を見つめて…彼のことが好きでたまらないって顔だった。

彼に背中から抱きしめられた感触を思い出す。

彼の体温と…強い力と…硬い感触と…耳元にかかる熱い息。

そして私の名前を呼ぶ声。

もう一度あの声で私の名前を呼ばれたら、私はきっとなんでも許してしまう。



「ゆめバイバーイ」

放課後、連れだって帰るクラスの友達に声をかけられる。

いつも私は逢坂くんと帰るから。

「待って、私も一緒に帰っていい?」

私がそう言うと彼女たちは顔を見合わせた。

「彼氏は?」

「ん…ケンカした」

私がそう言うと、彼女たちは大げさにウンウンと頷く。

「わかった。飲みに行こう!」

「マック行く?」

「いや、こういうときはスイーツでしょ!」



ミスドでドーナツを頬張りながら質問責めに合う。

「いつもラブラブなのにどうしたの?」

「何が原因?なんでケンカしたの?」

…全部は話せないけど。

「実は…なんか逢坂くん。エッチなことばっかりしたがって…。なんかちょっとイヤ…みたいな」

みんなが大きく頷く。

「あるある〜」

「え〜でも逢坂くんてそんなふうに見えない〜」

「男子はみんなそうでしょ〜?ていうかムッツリってやつ?」

「あ〜文芸部だもんね。ムッツリって感じ〜」

「それ文芸部関係なくね?」



みんなに話を聞いてもらい、みんなの彼氏や片想いの話を聞いた。

昨日の夕方から、今日の授業中もずっとモヤモヤしてたけど、

みんなもいろいろあるんだなぁ…

と思うとちょっと気がラクになった。



家で机に向かって宿題をする。

つい引き出しを少し開けて、しまってある写真を覗いてしまう。

捨てるために持って帰ってきたのに。

彼の声が聞きたい。
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