第9章 写真
次の朝も、次の朝も、彼は同じ場所で私を待っていた。
私が通り過ぎるとき、彼はいつもちょっと本から顔を上げた。
…
一人で放課後を過ごすようになってから3日くらい、私は寄り道して買い物したり、書店で立ち読みしたり、ゲーセンに行ってみたりした。
でもすぐ飽きたので、家にまっすぐ帰って勉強するようになった。
遊園地で買ったピンクのクマくんのシャーペン、逢坂くんとお揃い。
これで勉強すると頭が良くなるような気がした。
逢坂くんもこれで勉強してるかな。
それとも変な小説書いたりしてるのかな。
引き出しを開けて写真を取り出す。
私はレターセットの中からなるべくシンプルな封筒を探し出し、その写真をそこにしまった。
…
その日の朝、いつものように時計の下で本を読む逢坂くんに私が近付くと、彼は少し驚いた様子で顔を上げた。
私はカバンの中から封筒を出し、彼に手渡す。
「これあげる」
彼は黙ってそれを受け取り、中の写真を取り出した。
私と逢坂くんがキスしてる写真。
「…僕を許してくれるの?」
彼が口を開く。
「わからない」
私は正直に答える。
「でも逢坂くんのことが好きなの」
彼は一瞬だけ目を伏せ、改めて私の目を見る。
「ゆめちゃん…。僕も君のことが好きだよ」
私は泣きそうになるのをこらえながら、強気を装って微笑む。
「知ってる」
私がそう言うと、彼もちょっと笑った。
「学校行こう」
「うん」
歩き出した彼の、ちょっと後ろを私は歩いた。