第9章 写真
「…それは…写真?」
バカみたいな彼の答えに私の怒りが噴き出す。
「どうしてこんな写真があるかって聞いてるの!私、こんな写真撮らせた覚えない!」
私はまずキスしてる写真を彼に突きつける。
「それはね…」
彼の目がちょっと泳いでいるように見える。
「たまたま…たまたま撮れてしまって…。
ゆめちゃんを待っている間、退屈だったからデジカメの動画をいじってて…
そのままその辺に置いてしまったみたいで…
それで撮れたのを見てたら可愛かったからつい切り取って写真に…」
「たまたまぁ?本当に?」
私は彼に疑いの目を向ける。
彼が慌てて答える。
「本当!」
「…この服、私がお弁当持ってきたときに着てた服なんだけど。もっとすごいのも撮れてるんじゃないの?」
「撮れてないよ!」
彼がちょっと食い気味に答える。
「ちょうどこれぐらい!これぐらいまでしか撮れてなかったんだ。残念ながら」
「残念ながらぁ?」
私は彼をにらむ。
彼は無言で頷く。
本当かなぁ?
「じゃあこれは?」
寝顔の写真を彼に向ける。
「それは…ゆめちゃんが寝てる時…撮りました…」
「もっと変な写真も撮ったんじゃないの?勝手にっ!消して!こんな写真…データも消して!」
「消したよ!もう消したから!間違って撮れたものも全部」
彼が慌ててデジカメを取り出す。
そしてプレビュー画面にして私に渡す。
確かに変な写真はない。
脳天気にピースサインしてる私の写真がいっぱい。
「勝手に撮ったものをプリントしたりしてごめん…」
彼がうつむいて本当にすまなそうに謝る。
私はまだ何も言う気になれない。