第7章 桃色
「部活が遅くなるんだったらメッセくれたら先に帰ったのに」
私はわざとちょっと非難口調で逢坂くんに言った。
「ごめんね。帰り際に話しかけられて…」
逢坂くんが言い訳をする。
「そんなの彼女が待ってるから帰るねーて言えばいいじゃん」
そう言って私は歩き出す。
今、気づいた。
私ヤキモチ焼いてるんだ。
カッコワル
「ごめん…。明日休みだしちょっと聞いておいた方がいいかなと思ったら長くなってしまって」
「へぇ…」
何の話してたんだろうなー。
難しい本の話とか私と出来ないもんねー。
心の中で嫉妬深い気持ちがいっぱい湧き上がってくる。
「ゆめちゃん。怒ってる?」
「べつにっ」
別に本当に怒ってるわけじゃないんだけど怒ってるみたいになっちゃう。
「僕は君だけのものだから安心して?」
彼の言葉に私は思わず一瞬立ち止まる。
「…うん」
そして顔のニヤニヤがバレないように、また歩き出す。
「そういえば明日、お昼前にお家行って大丈夫?」
今度はテンションの高さを少し隠して話しかける。
「うん。明日は朝から誰もいないから二人きりでのんびり勉強しよう」
逢坂くんがにっこり笑って答える。
もうすぐテストなので逢坂くんの得意な現代文と、私が超苦手な化学を教えてもらうんだ。
「もしよかったら…お昼、お弁当作ってこうか?」
ちょっと恥ずかしいけど思い切って提案してみた。
「作ってくれるの?いいの?」
逢坂くんの声が嬉しそうに弾む。
「普通のお弁当だよ。私がいつもお昼に食べてるみたいなの」
先に言い訳しておく。
「普通ので充分だよ!食べてみたいなぁ…ゆめちゃんの手作り弁当」
逢坂くんがちょっと顔を赤らめる。
「うん!じゃあ作ってくね。あまり期待しないでね?」