第2章 青薔薇の呪い
“ちょうど良かったから”
カイザーの言う“のジジイ”、もといの曽祖父に会う機会があった。
親どころか、歳の離れた兄と言われても信じてしまいそうな美貌と若さにぞっとしたものの、何故年頃のカイザーと大事な曽孫を同じ屋根の下に入れたのか訊いた。
が、その回答は質問したことを後悔するほどあっさりしていた。
“自分達の生家、継国家は価値観が平安から変わっていない”
“そんな中では14歳で成人扱いになって当主になった”
“の肉親はもう曽祖父である己だけ”
“だから家の存続にはが子を産むしかない”
“そのためなら15で母親になっても、子の父親が誰であっても構わない”
“幸か不幸か、継国の体質的にがそれで死ぬリスクはないから”
カイザーは目の前の男への嫌悪感を隠さなくなった。
“ヘイアン”とやらが何かは知らないが、古い時代を受け継いでいる家だというのはだいたい分かった。
の血族がこの男しかいないことも。
カイザーからの嫌悪を知ってか知らずか、男は不愉快になる話をペラペラと続ける。
“お前がそばにいたおかげでは多少情緒が育った”
“あとは高校でなんとかなる”
“そして、お前は過去の友人になる”
ひゅ、と喉が嫌な音を立てた。
がドイツを去れば、カイザーとの関わりは極端に減る。
彼女はドクターを目指しているから、サッカープレイヤーのカイザーとはとても関わらないだろう。
“はお前に愛着はあっても執着はない”
“子が1人できたところでの義務は終わらない”
“だがお前は違う”
“が帰国するまで、何がお前にとって最善か考えろ”
“今のお前の最大限のエゴをに示せ”
カイザー自身のエゴ。
それを考えて、カイザーは無意識に己の首を絞める。
(俺が、に示すモノ……)
クソ親父から、金を求めて媚びた声で呼ばれた名前は、がたった一声かけただけで不快じゃなくなった。
体を重ねていた時、が首に触れることで不快な記憶が蘇ることはなくて、むしろもっと触れて欲しくて何度も貪った。
(俺は、に__)