第6章 こぼれ話
「確認しただけだ。知っているなら問題ない。次に、語学学習の問題集が一部各々で違っていたのは気づいた?」
「はい。語学なのに明らかに別の教科があったので」
「俺達それぞれの学校のもんでしょ?」
「そうだ。巻末にある確認テストの正答率が6割以上なら、無条件で卒業資格が得られる。そういう交渉をした」
「……まさか35人分の学校全部に回った?」
「まさか。3年生の分だけだ」
それでも相当な労力である。
雪宮なんかは九州だ。
この監獄にいる女性は行動力のある人間しかいないのだと改めて感じた。
「青い監獄には季節の区切りがない。甚八くんが色んな無駄なものを排除したから。でも、私は必要だと思った。特にあなた達3年生には」
絵心甚八の目的は、普通の高校生の生活ですら邪魔になりかねないものだ。
だからこそ、は邪魔にならない、かつ高校生としての区切りがつけられる提案をして、それが絵心に認められた。
人形のような美貌の彼女から無感情ではなく、冷徹さの奥にある温かみを確かに感じた。
「……俺やっぱちゃんと結婚した___ッたい」
「お前ホンマええ加減にせぇ」
今のどこに誰の思慕があったんだとが言う暇もなく、烏が乙夜を叩いた。
「結婚はしない。好意は受け取る」
「「「え」」」
「以上。解散」
今まで乙夜も含めて色んな男達からそういう言葉をかけられたが、は全てノーコメントだった。
故に初めてのリアクションで、しかも随分肯定的だ。
どういう心境の変化だと真意を確かめることは叶わず、そのままはU20日本代表チームの方へ行ってしまった。