第4章 VS 世界選抜チーム
深夜の大浴場。
誰もいない時間帯に1人で湯船に浸かっていた潔世一のところに、ガラガラと扉が開いた音が聞こえて反射的に振り向いた。
「潔世一か」
「へ」
普段の潔ならば、いくらが急に目の前に現れてもここまで驚かず、ここまで間抜けな声を漏らさなかった。
ここが風呂場でさえなければ。
が全裸でさえなければ。
「〜〜〜っ」
「一応大声は出すな。響く」
冷静になれなかった潔は、浸かっていた湯船に頭まで入れて潜った。
(さんだったよな?こんな夜遅くに見える幻でも幽霊でもないよな?)
ザパッと頭を出して改めて見たら、は潔に背を向けて呑気に頭と体を洗っていた。
幻じゃなかった。
「な、なんでここにいるんですか」
「久しぶりに湯船に浸かりたかった。この時間帯はほとんど誰も浴場に来ないから来た」
「すみません…」
「勝手に入ったのは私の方だ。悪かった」
「いえ…」
潔はここでまた一つミスをした。
出ていけと言えばは大人しく出て行っただろうに、完全にタイミングを失った。
そしてさらにハプニングは重なる。
タオルで目を覆っているので目には見えないが、浸かっていた湯がちゃぷんと動いたのをしっかり感知した。
「さん、もしかして俺と同じ湯船に浸かっていますか?」
「いる」
「なんで??」
「湯船に浸かりたかった、と言った」
「そうだけどそうじゃない」
お忘れかもしれないが、潔世一は健全な男子高校生であり、ブルーロックという特殊な環境においても、ちょっと年上で美人で頼れる先輩タイプのにドギマギした日々を送っていた。
お風呂でバッタリなんてハプニングが起きて、今の潔はまともに目を合わせられるわけがない。
なんなら頭の中は、先程がっつり見てしまったの玉体でいっぱいである。
そんな潔の状態を知ってか知らずか、は潔をがっつり見つめていた。
厳密には、潔がタオルで覆っている目元を。
「潔世一、目を見せろ」
「はい???」
通常ならばなんの疑問にも思わないが、今はお互い全裸である。
おかしいのはの方だが、今それを言える人間はここにはいなかった。