第3章 白衣の看守人
日本の旧家の一つ、継国家。
その現当主であるがブルーロックという閉鎖環境下とはいえ監視も無しで野放し状態にあることは、継国を知る人間から見れば脅威も甚だしいらしい。
今の段階のブルーロックの状態は郊外秘だから。
からすれば知ったこっちゃねぇと言うところだが、失うものが全く無いわけじゃない。
曽祖父が暗殺でもされたら夢見が悪い。
そんな感じで、は週一ほどの頻度で自身の体のデータを研究所に送ることと、試験薬の投与を条件にブルーロックでの常駐が認められた。
前者はスーツの下に着込んだボディスーツと、自分でおこなった採血・心電図・レントゲンなどのデータを。
後者は法外で非倫理的な試験薬を飲み、その症状と結果を。
試験薬は、どうなるかわからないから試験薬という。
しかし、その「どうなるか」が最悪なことにはならない保証があるのが継国だった。
そして、今日は“当たり”の日だったようだ。
「頭の上に数字が見えるとしたら、なんの数字だと思う」
とたまたま朝食が一緒だったのは、潔世一と二子一揮。
お互い二次選考を通過しているので、比較的穏やかなひとときを過ごした。
職業柄、非現実的なことはあまり口に出さないからそんなことを言われたのだから、2人揃って驚くのも無理はない。
「えっと…漫画の話ですか?」
「それでいい。なにか言え。潔世一」
「俺!?えーとそれじゃ…好感度」
「二子一揮」
「僕も最初は好感度を思いつきました」
「なるほど」
食後のお茶をスス…と静かに飲んだはちらっと2人の頭上を見て、改めて同じことを言った。
「なるほど」
「待って何がなるほどなんですか」
「まさか見えてる?ねえさん見えてるの?好感度が?」
「……」
は冗談は言うが嘘は言わないし、他人が本気で嫌がることもしない。
ということはつまり、好感度ではなくても何かしらの数字が見えている可能性が高い。
視線に敏感な2人が、今日はなぜかと目が合うことが少ないという違和感が疑惑を後押ししてしまった。