第3章 白衣の看守人
「ちゃーん」
「ん」
「デートしよ」
「俺の目の前でナンパすんなや」
ブルーロック内、二次選考の合間。
300人だったストライカーは入寮テストと一次選考を経て125人までに減った。
ここまで人数が絞られたところで、に特定の選手以外との個人的な交流が認められた。
具体的に言えば、診察室でじっと待つこと以外に、監獄内を自由に回れるパトロールが解禁されたのだ。
そういう経緯で、現在は顔見知りの乙夜影太と烏旅人に捕まって食堂で駄弁っている。
就寝前のリラックスタイムのような扱いなので、一緒にお茶を飲むくらいは咎められない。
「……釈放されたら皆いくらでも遊べるだろ」
「釈放言うなや」
「俺はちゃんとデートしたいの。釈放だろうがゴールポイント10点で外出権使おうが、ちゃんの一日は貰えないでしょ。あとちゃんは絶対のらりくらり躱すから確固たる約束が欲しい」
「デート一つにそんな真剣になれるか普通」
公式試合かと思うほど真剣な顔でふざけたことを言う乙夜に、は若干たじろいだ。
「烏旅人、あなたの意見を聞きたい」
「俺?」
「ここで私が頷いたら、選手のモチベーションは上がる?」
「そら上がるやろ」
この監獄内で、継国を異性として意識していない男はいない。
業務内でしか真正面で向き合わないの時間を独占できるのだ。
滾らないエゴイストはここにはいないだろう。
「……分かった。追加する」
「待って嫌な予感がする」
「3ゴールポイントにつき『継国を好きにできる権利※コンプライアンスに基づく範囲で』を裏ボーナスに追加」
「なんてことしてくれてんの烏」
「俺のせいちゃうやろ」
確かにこれでと確実にデートができる。
しかしこれは乙夜に限定されたものではなく、その気になればチームメイトの烏や雪宮だってできることになる。
そうだけどそうじゃない、という乙夜の独占欲が空振る音がした。
結果として、翌日以降選手達のモチベーションはものすごく上がったらしい。
「甚八くん、私もしかしてやらかした?」
「盛大にね」