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【青監夢】跡継ぎを産めと言われて収監されました

第3章 白衣の看守人


この監獄で一番愛されているのは誰か。
その答えは、満場一致で「継国だ」となるだろう。

継国は美しい。
神が丹精込めて創造したのかと思うほど整ったかんばせをしており、黒い髪と瞳も相まってか神秘的だとも捉えられる。
日本女性の平均身長を上回る背丈と抜群のプロポーションは、ただ歩いているだけでここはレッドカーペットかと錯覚するほどだ。

ここだけなら、ただ見た目と愛想が良いだけのマネージャーがチヤホヤされていると思うだろう。
しかし、監獄で生き残る猛者達の中で、それを考えている者はもはやいない。

色気を感じさせない(というか感じることを許さない)パンツスーツとハーネスベルトは動きやすさを重要視したもの。
その上に羽織る白衣はドクターであることを示すもの。
長い黒髪は簡単に纏めているだけだし、形見だという鈴飾りのピアスは、試合では必ず外している。
己の美しさに対してなんの思い入れもないと言わんばかりの格好だ。

そして愛想も良くはない。なんなら悪い。
ガッチガチに固まった表情筋は、快不快はなんとなく分かっても喜怒哀楽はほぼ示すことはない。
愛想笑い作り笑いなんて以ての外。

ではなぜ、愛想が悪い堅物女を皆が慕っているのか。
答えは簡単。彼女が1人のドクターとしての責務を全うし、着実に信用を重ねたからだ。

最初に彼女を信用していた人間は2人。
幼馴染の乙夜影太と、彼女が短期間の家庭教師をしていた相手である御影玲王。
その2人との砕けた会話から、彼女と打ち解けていく人間が増えていったのだ。

ここまでなら、ただ彼女を「信頼できる人間」と言えばいいのだが、冒頭では「愛されている人間」と言った。
そこはまあ、「男子高校生300人の空間で、面倒を見てくれるドクターが歳が近そうで美人で真面目で面白い女医だった」という状況から察してほしい。

自身も向けられる好意や悪意を感じてはいても、人生がかかったサッカーをやってる中で恋愛に現をぬかしている暇はないだろうと高を括っていた。
しかし彼女は失念していた。
監獄での日々を重ねるにつれて、彼らが強欲なエゴイストになっていくのだということを。
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