【R指定】リクエスト・コミュ企画短編集【原作色々】
第9章 【コミュ企画】【ヒロアカ】それは瞬く星のように【ホークス】
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―ヒーローごっこしようぜ!お前は敵な―
幼い頃の記憶だ。
いつもいつも敵役にされた。
たまには私もヒーロー役をやりたかった。
でもそう伝えたら、皆に一蹴された。
―お前、何言ってんの?―
―お前の親、敵だったんだからヒーローになれる訳ねぇだろ!―
―そうだそうだ、敵の子供がヒーローなんておかしい!―
―お前が悪さする前にこらしめないとな―
私は敵以外あり得ないのだと。
私以外の皆、大人までもが口々にそう言うから、いつからかきっとそうなのだと悟るようになっていた。
そうやって諦めたら少しだけ苦しくなくなった。
―あっ!ヒーローに変身して悪さする敵ならいいんじゃね?―
―いいじゃん!―
―おい、早くやれよ!ヒーローに変身する悪い奴!―
私が悪いことをすると疑わず、むしろ望んでいた彼ら。
……何故、今こんなことを思い出したんだろう?
「何か困ってます?」
最近よく聞くようになった声にはたと顔を上げると、私の顔を窺うように少し屈んだホークスと目が合った。
ホークスの瞳に映る私はいつも通りの無表情、困っている様子など外からは分からないはずなのに。
どうやったらあなたを今回の捜査から外せるか悩んでいたんです、などとは当然言えない。
だから問い返した。
「……どうしてそう思ったんですか?」
「あ、違いました?なんとなく困ってそうな背中だったんで」
「……」
言葉が出なかった。
背中を見ただけで声なき声まで分かってしまうの?
私みたいな取るに足りない薄汚い人間にも手を差し伸べるの?
……でも、心のどこかで納得した。
だからこそ助けを必要としている人々をいち早く見つけ、救うことができる。
それができるから、やり遂げるからこそヒーローと呼ばれるのだ。
やはりこの人は向こう側にいるべきヒーロー、その翼も心も汚されてはならない。
こちら側に来てはいけない人だ。
この時、カチリと心が決まった。
「別に困り事はありません。声を掛けてくださり、ありがとうございます」
結局、敵の子は敵になるしかないのだとしても、彼がこちら側に来なくて済むのなら私なんていくら汚れても構わない。