第7章 【幽遊白書】その蕾はいつか花となる【修羅】

『お前が出る幕じゃ無いんだよ。』

口パクでも蔵馬にはハッキリと聞こえた。

「……………。」



間違い無く黄泉の子供だ。

確実に蔵馬の逆鱗に触れてくる。



顔は笑顔だが、明らかに苛立っている蔵馬を横目に修羅は仁美を見上げた。



「？」

修羅の目線を受けて、仁美は不思議そうな顔をしていた。

その顔を見て、修羅は少しだけ笑みを浮かべた。



良かった。仁美が今僕が何に苛立っているか分かっていなくて。



もし仁美が少しでも蔵馬に好意を向けていたのなら。

人間界のこの海など。

すぐに血の海に染まる所だった。



「修羅様♡この浮輪を使えば泳げなくても海に浮く様ですよ♡」



仁美は無邪気な顔で修羅に大き目の浮輪を見せながら笑っていた。

今、伝説の盗賊妖狐と魔界の３神の息子が一作即発だったのなんて気が付いていない。



無邪気な仁美も好きだけど…。

その可愛い女人が誰のモノなのかハッキリさせる必要はある様だ。

盗む事が得意の魔界屈指の盗賊が同じ宝物を狙っている様だから。



「修羅様って泳げますか？」

仁美達は海に入ったけど、仁美の腰までの深さで足が止まった。

浮輪は１つしか無かった。

その１つを仁美が腰に浮かせていた。



これ以上深い場所に進んでは、修羅の足が届かなそうだ。



「…泳いだ事は無いけど…あまり得意じゃ無いかも知れない…。」

そう言うと修羅は一瞬だけ海に潜って、仁美の浮輪の隙間に体を入れ込んだ。



「…っ修羅様っ。」

仁美の目の前に、海から顔を出して、同じ浮輪に入ってきた修羅の顔が見えた。



仁美が慌てた理由は、大きめだと言っても1人用の浮輪の内に、修羅が入って来たからだ。

こんなに彼と体が密着をしたのは初めてだ。

1人では大き過ぎると思っていた浮輪だったのに、修羅が入ってくて急に苦しい位に体が密着したのだ。