第5章 【R指定】【呪術廻戦】七海建人の恋人事情【七海建人】
結局なす術なく1人の泥酔者が出来上がる。
倒れる様にうつ伏せに寝ている男を見て、仁美はため息を吐いた。
相手を刺激しない程度であしらう。
これが仁美のやり方だ。
「いつもごめんなさい。起きたら適当に帰して下さい。」
そう言って、仁美は席を立った。
「仁美ちゃんは………大丈夫そうだね。」
一瞬仁美の事を心配したバーの店員は、すぐに安堵の笑みを見せた。
バーのドアが開いて入ってくる人物に、仁美の顔もまた緩んだ。
「……帰りますよ…。」
「はい。」
七海が差し出す手を、仁美はニッコリ笑って掴んだ。
そして店を出て行くいつもの2人を、バーの店員は見送った。
仁美は実際上手くやっていた。
適度に遊び、他の時間を七海に使う。
七海もそんな関係に満足していると、その時はそう思っていた。
また他の飲み会の時だった。
今日もまた一次会で帰るだろう。そんな風に思っていて、今度は二次会に誘われた。
正直そのメンバーでの二次会は嫌な思いしかしなさそうだ。
彼女探しやら、一夜の遊びやら。
そんな噂の絶えないメンバーだったからだ。
これは少し骨が折れそうだ…。
そう思っていた時だった。
「仁美。」
聞き慣れた声に振り返りながらも、少しギョッとした。
自分の背後に七海が居たからだ。
ビックリしたのは仁美だけで無く、サークルメンバーも驚いていた。
七海を見て、顔を赤らめる同級生に、少しイラッとした。
「すみませんが、私の恋人は門限があるので。」
『門限』、そんな事は初めて知った。
ゆうても、まだ一次会が終わった9時ほどだ。
「遅くまで誘わないで貰えますか?」
そう淡々と言い放つ七海に、たかだか大学生の彼らに何が出来るだろう。
答えは何も出来ない。
特に、仁美を熱心に誘っていた男をしっかりと見て、七海は言った。
仁美はそんな七海は初めてで、でも初めて声をかけてくれたあの日の出来事を思い出した。
なんだ……。
本当に初めから建人さんは私を好きでいてくれたんだ。
あの日の様に男を追い返す七海を見て、仁美は思わず顔が緩んだ。