第5章 【R指定】【呪術廻戦】七海建人の恋人事情【七海建人】
七海の言葉が理解出来なくて、仁美はしばらく七海を見つめた。
何も言わない仁美に七海はため息を吐いた。
そのため息の音で、仁美の頭は現実に戻る。
「ちっ誓えます!!私七海さんしか好きになりません!!」
今度はか細い声では無くハッキリと、片手で探る様に掴んでいたスーツは両手で強く掴んだ。
そうして七海に近付いて見上げた彼の顔は、少し緩んでいて笑っている様だった。
その七海の顔に、仁美はまた胸をときめかせる。
「……今言ったこと忘れないで下さいね。」
そう言って七海はポケットの中からハンカチを出すと、仁美の顔を優しく拭った。
自分の世界が一転して変わった夜だった。
結局その夜は七海は仁美の部屋の前まで送ってくれた。
早く部屋の中に入る様に言った七海の方が、何処か名残惜しそうに感じる位だった。
仁美はその夜ベットに潜っても、寝れる感じがしなかった。
先程の七海とのやり取りを思い返して、何処か現実味のない余韻に頭を支配される。
「……あ……連絡先……。」
急に七海の連絡先を聞いていないのを思い出した。
このまま何事も無かったかの様に、七海は消えてしまうのでは無いか。
そんな不安すら覚えた。
仁美がそんな不安を感じていると、スマホが鳴った。
液晶を確認すると、LINEの友達追加の知らせだった。
仁美は七海に前にLINEのIDを渡した事を思い出した。
やはり七海の名前を確認すると、渡した手紙はまだ七海が待っていたのだと分かった。
そう言えば彼は仁美の名前を聞いてこなかった。
ちゃんと名前も連絡先も持ってくれていたからだと気が付いたら、涙がまた出た。
夢の様な出来事が、夢じゃ無いと分かって。
仁美はその夜スマホを抱き締めながら眠った。
「おはようございます。」
「………おはようございます。」
次の日からも、七海はコーヒーショップに来てくれた。
変わった事と言えば、『ブレンド』と言う言葉の変わりに、こうして挨拶を交わす様になった事だ。
朝から七海の顔が見れて仁美は前より気持ちが弾んだ。