第5章 【R指定】【呪術廻戦】七海建人の恋人事情【七海建人】
仁美はまだこういった好意に対して上手く対処出来なかった。
バイト先が一緒だから、この先に不都合があったら困る。
好意に対して、無碍に断るのは相手を傷付けるかもしれない。
時にはハッキリと、引ける所は引いていた。
それでも治らない相手の行動は、どんどんエスカレートしていった。
その内バイト終わりにも仁美を待つ様になっていて、ようやく仁美は自分の愚かさに気が付いた。
当たり障り無くなんて、お互い大人だから出来るのだ。
七海の様に綺麗に対処してくれても、仁美の様に相手が子供だったら、その恋心は無謀にも消えない。
だけど自分は七海に対してこんなにしつこくした覚えもなければ、困らせた事もないだろう。
相手の事を考えられない彼の行動に仁美はハッキリと苛立ちを覚えた。
更に仁美に嫌悪感を持たせたのは、その男が仁美の腕を掴んだからだ。
その瞬間にゾゾゾッと仁美に悪寒が走った。
掴まれていた腕から背中にかけて、いい様の無い不快感が募った。
「…離して下さい!!」
思わず発してしまった言葉は、自分で思ったよりも強い口調になっていた。
それまで大人しく話は聞いてくれていた仁美がそんな態度を取った事に男は一瞬驚いていた。
しかしそれは一瞬の事で、男はすぐに余裕の笑みを見せる。
年齢は仁美より少し上くらいだろうか。
だからと言って、自分なら簡単に靡くと思われている為の行動なら、凄く不快だった。
仁美の声も大きくなる。
それに比例する様に、苛立ちを隠せなく男に、行き交う周りの人達も気付き始めた。
もういい加減に終わりにしたいやり取りに疲労した時だった。
仁美の腕を掴んでいた男の腕が捻り上げられる。
同時に漏れる悲鳴様な男の声を聞いて、仁美は顔を上げた。
男の背後に七海が居た。
名前も知らない。
だけど、毎日見て胸を焦がす。
そんな彼が自分と男を見下ろしていた。
「…………嫌がっている様に見えますが。」
声はとても落ち着いているけど、冷たく男を見下ろした七海の目には仁美ですらゾッとした。