第5章 【R指定】【呪術廻戦】七海建人の恋人事情【七海建人】
仁美が七海建人と出会ったのは、まだ大学生活にも慣れて居ない頃だった。
親の仕送りだけでは足りない大学生活の足しにする為に、始めたバイト先の客の中に七海は居た。
人より頭1つ高く、綺麗な金髪の青年はすぐに目に付いた。
キチンとスーツを着て、毎朝コーヒーだけを買って行く七海に仁美はすぐに夢中になった。
『…あの…もし良かったら…。』
大学のない日や、午後からの授業の時に仁美はなるべく朝のコーヒーショップで働く様にした。
それが半年ほど過ぎた頃に、意を決して七海に連絡先を紙で渡した。
『………………。』
七海は何も言わず連絡先は受け取ってくれたが、彼から連絡が来る事は無かった。
仁美は強い後悔に襲われた。
それでも何とかバイトを続けられたのは、その後も七海はそのコーヒーショップに変わらず来てくれたからだ。
気にしているのは自分だけで、七海にとってはたいした事では無いのかも知らない。
彼はきっとモテるだろうから、自分みたいな無謀な女性には慣れているのだろう。
どんな予想も仁美には胸を痛める事だった。
それでも彼が変わらず来てくれるなら、この気持ちが風化するまで大人しく彼を好きでいようと、そう決めたのだった。
『ブレンドで。』
そう静かに言う七海の声が好きだった。
目を伏せて注文する視線も、見上げて見る七海の顔も。
好きだと言う気持ちを諦めるには、仁美は彼の全てを好きになり過ぎていた。
そうして毎日同じ、密かに七海を見ていただけの日々に、新しい出来事が起こった。
その頃困った事に、七海に会う為だけに働いている同じバイト先の客で、しつこく仁美を誘う男が居た。