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【R指定】リクエスト短編集【原作色々】

第3章 【R指定】【ヒロアカ】白から黒、そして白【荼毘・燈矢】



だから、もしかしたら荼毘に会うかもしれないと、そんな予感はしていた。



反乱の首謀者の死柄木が姿をくらました時間は、ヒーロー達は対策を練り。
私達は町の治安の為に時間を惜しんで働いた。



被災が酷かった町で、深夜の瓦礫を跨いで診療所に戻る時だった。


その声を久しぶりに聞いた。



「…あんたが『無償』で働く事なんてあるんだな。」



頭上から声が聞こえて、私は顔を上げた。

壊れたビルの瓦礫の上から、荼毘は私を見下ろしていた。
初めて会った時と同じ様に、荼毘は白に戻っていた。


だけどもうその頃の面影は無くて、月明かりの逆光が眩しくて、私は目を顰めて荼毘を見た。



白い少年は、世界の悪の象徴になっていた。




「……………。」
「……なんか言えよ…、もう話もしたくないって?」


勝手にいなくなって、またこうしてフラッと目の前に現れる。

だけど今回は『最後の挨拶』に来た様な、そんな気分になった。




「………燈矢くん……。」

私が荼毘を『燈矢』と呼ぶと、荼毘の下瞼がピクッと動いた。







「私と一緒に何処か遠くに行こうか。」







私はそう言って燈矢に手を差し出した。

私が手を差し出す意味を燈矢は知っている。


彼は私の手に包まれて、ヒーリングされるのが好きだった。



治療が必要ない時でも、彼はお金を持ってヒーリングを受けに来ていた。



燈矢は少しだけ目を見開いて、私を見ると、いつもの様にまた目を細めた。





「………『無償』なんてらしくない事してないで、さっさと引っ込んでろよ。仁美さん。」


そう言って燈矢はまた私から姿を消した。


その言葉は、自分の炎が私に届かない所に行けと、そう言われている様だった。


思えば、燈矢から名前を呼ばれたのは初めてだった。

なんと無く、彼の名前を私が呼んだから、燈矢は私の名前を呼んだのだと、そんな事を考えた。






どうやら彼は。
私より死を選ぶ様だ。


『まだ死なねぇよ。』


そう言った彼の言葉を思い出す。


だから、私は決めた。
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