第3章 【R指定】【ヒロアカ】白から黒、そして白【荼毘・燈矢】
床に転がる2体の焼死体。
「…安心しろよ。」
私は近付く荼毘から後退りして、その焼死体が足に当たった。
「『そうなった奴』を始末してくれる人間を知っている。」
そう笑った荼毘の、白い前髪の奥に光るよう青い目を見た。
「…………。」
どうやら私は、とんでも無い人間を助けた様だ。
その2体の焼死体は、その夜に荼毘が引きずる様に何処かに持って行った。
荼毘が横切った時、荼毘からも肉の焦げた臭いがした。
それが蒼炎を放った荼毘の手から臭うと言うのは、すぐに分かった。
荼毘が診療所に来る度に新しく出来た火傷痕を見ていたので、彼の個性は何となく気付いていた。
そして、その焦げた体が、私が知らない時間に荼毘が何をしていたのか教えてくれている様だった。
それからしばらく荼毘は現れなくて、私はこのまま荼毘が2度と来ない事を望んだ。
それでもやはり、荼毘は私の前に現れる。
新しい火傷痕を作りながら。
「……また移植しないと、皮膚が爛れ落ちるよ。」
既に変色している皮膚を見ながら、私は言った。
「……金は?」
「全然足りない。」
手にある荼毘のお金を見て、私はすぐに目を逸らした。
私は荼毘が持って来たお金の分しか治療しない。
「……なら、別にいい…。」
荼毘の体は皮膚を移植している部分は痛覚が通っていない様だった。
そんな事はあり得ないのに、何故かそんな風に思えた。
部屋で寝ていると、人の気配がして目を覚ました。
私が薄っすらと目を開けると、ベットの上から私を見下ろしていたのは荼毘だった。
暗闇の中、青い目が真っ直ぐ私はを見ていた。
こんな事は荼毘と出会ってからは初めてだった。
「……どうしたの?」
隣の病室に居るはずの荼毘が、私の部屋に居ても、私はそれほど驚かなかった。
皮膚の移植をしない私が要らなくて、殺しに来たのだろうか。
何も言わない荼毘を、私はただ見返していた。
しばらくお互い無言で見合っていると、荼毘の手が私の肩に触れた。
その手からは青い炎は出なくて、撫でる様に触れてくる荼毘に、私は荼毘がどうしたいのか分かった。
荼毘の手は、皮膚を移植している部分に体温は感じず、まるで死体の手が触れている様だった。