第3章 【R指定】【ヒロアカ】白から黒、そして白【荼毘・燈矢】
「……起きたの?」
「…………。」
ゆっくりと目を開けた少年を見て、私は声をかけた。
信じられない事に、この子は丸3日寝ていた。
私の言葉で一瞥を向けた目は、自分の腕に刺さっている点滴に目をやると、ゆっくりと周りを見渡している。
「…医者なのか?」
「まぁね…、普段は病院に務める事もするけど、基本的には自宅で君みたいな病院に行けない訳ありの患者を看る闇医者だよ。
よく言えば、フリーの医者だと思ってくれればいい。」
この自宅の一階部分で開業をしている。
一見ただの家にしか見えないこの建物は、知っている人が訪れた時のみ扉が開かれる。
私は点滴の速度を落とすと、ぼんやりとこちらを見ている少年の顔を見た。
初見で私が思った事は『よく生きているな』と言う感想だった。
内臓も体力も、生きて動くには機能が全然足りていない。
放っておけば、勝手に死ぬ人間をわざわざ自宅に招き入れたのだ。
私がこの世で1番嫌いな事。
それは『無償』だった。
違った言い方をすれば、お金さえ持って来たらどんな患者だって治療する。
それこそヴィランだって構わない。
そんな事を繰り返していたら、『闇医者』の名前が付いてきたのだ。
私はただお金を貰って治療している。
そこで人間を分けていないだけだ。
目の前の患者は明らかに、お金を持ってくる人間では無い。
延命処置にだって、お金はかかるのだ。
私はそこまでこの少年の面倒を見る気は無かった。
「お金が無いならさっさと出て行って、動ける位には回復してるだろうから。」
死ぬなら知らない場所で死んで欲しい。
自分の家で死なれるのが1番迷惑だった。
「……金って、どうしたら貰えるんだ?」
治療を受けたいと言う事だろうか…。
「普通は働いたり、私の治療は保険効かないから高いから、それこそ盗んだお金で治療を受けに来る者もいるだろうね。」