第2章 【R指定】【ヒロアカ】butterfly【綠谷出久】
それから何日も仁美の居る温室に通う日々が続いた。
ここに来ると、胸が痛くなるだけなのに、綠谷は来る事を辞められない。
その理由はノートを完成させていないから。
仁美に呼ばれるから。
色んな理由を付けても、本当は何も納得出来ていなくて、ノートには最後には皺になる仁美の絵だけが増えていく。
そして、いつもの様に温室に向かうと、温室の中を見て綠谷の体が震えた。
温室の中に爆豪勝己と仁美が2人で居るからだ。
綠谷の胸が苦しくなるほど痛んだ。
2人の姿を見ただけで息が出来なくなる位で、綠谷はまた服の上から胸を掴んだ。
その内爆豪が温室から出ていくと、綠谷はやっと温室に入って行った。
綠谷が入ってきたのが分かると、仁美はまた笑顔を見せる。
しかし、綠谷の表情は強張っていて、その頬はいつもの様に赤く染まらない。
むしろ顔色が悪いと思える位に真っ青な顔をしていた。
「……かっちゃんは何でここに来たの?」
「爆豪?ちょっと私が用事あったんだよ。」
綠谷がいつもとおかしい事は分かっていたが、仁美は変わらずいつもと同じ様に淡々と答える。
「かっちゃんは呼ばれたからって簡単に来たりしないよ!!」
急に声を荒げた綠谷に、流石に仁美も目を丸くした。
困惑している仁美に綠谷は続けて声を出した。
もう、限界だった。
この感情を吐き出したかったのだ。
「ぼ、僕だって、毎日来るなんてしないよ!他にしなきゃいけない事いっぱいあるのに!!
なのに、何故かいつもここに来ちゃうんだよ!!
ねぇ、仁美さんの蝶が僕に何かしたんでしょう?!
かっちゃんにもここに来る様に同じ事したの?!」
顔を歪めながら目を見開いて叫ぶ綠谷に、仁美はゆっくりと目を伏せた。