第4章 お嬢様の仰せのままに
茶道の心得は子供の頃に叩き込まれたと話していたけど、執事の心得はどこで習ったのだろうか。
やわらかな液体の音。朝靄のように優しい湯気。綺麗な水色(すいしょく)。空気を染める香り。
贅沢な気分で紅茶を一口含むと、体全体に染み込むように広がっていく。自分で淹れてもこんな味わいは出ない。
ほぅ、と感嘆の声を洩らしてカップを持ったまま余韻に浸っていると、首を傾けて悟が微笑した気配がする。
「お気に召して頂けました?」
彼に問われて素直に頷く。しばらくそのまま香りに癒やされていたが、
「悟、いつもみたいにサングラスかけていて良いよ」
眼が疲れてきているはずだよね、と紅茶を飲みながら話しかけると、悟が苦笑する。
六眼は繊細だ。周囲の呪力の変化が詳細に視える分、彼の脳と眼の疲労が蓄積する。
戦闘時でもないのに、誕生日の戯れに神経を使わなくても構わない。
「では、お言葉に甘えて」
そう言って胸元のポケットからいつものサングラスを取り出して装着した彼を見遣り、私も残りの紅茶を飲み干した。
それから遅めの朝食をとり、お腹が落ち着いたところで悟に今日の予定について聞かれた。
「部屋からスマホ取ってくる。その後で決めようかな」
「かしこまりました」
ほんの数分くらいだからと悟の同伴を断り、自室に入ってすぐ部屋の鍵を閉める。
クローゼットを開けて、以前メイドプレイの時に使用したガーターベルトを取り出す。
黒いストッキングを履いてから金具で留め、これから実行する計画を考えて一人ほくそ笑む。
今日はショーツは両サイドを紐で留めるタイプにして欲しいと、悟から下心満載のリクエストをもらっていた。それを遠慮なく利用する。
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