第4章 お嬢様の仰せのままに
私の部屋着を脱がせて腕に抱えたまま、素早くワンピースを着させてくれた。
そのままブラウスの小さいボタンを止めてくれたが、着け慣れていない白い手袋をしているのに器用だと関心する。
「次は御髪(おぐし)を整えましょうか」
ドレッサーのイスを引かれて座ると、丁寧に櫛で髪をとかれる。寝ている間に絡まった毛先も、魔法のようにきれいになっていく。
悟の指が髪を掬う度に頭皮がさわさわとして落ち着かない。
編み込みを作るために触れられる度に、背筋から腰がくすぐったくて落ち着かなくなる。
私がモゾモゾ身動ぎしていると、
「どうされました?ゆめかお嬢様」
耳元で愉しそうに悟が笑う。
「悟の手がくすぐったいだけ」
乱れた呼吸を飲み込む。
口元を手の甲で押さえて答えると、悟が小さく笑いながら作業続行を伝えてくる。
ドレッサーの鏡の中の私の頬は、赤く色付いていた。
手袋越しとはいえ、彼の指の感触に慣らされた私の体が気持ち良さを感じて疼いてしまった。
「はい、できました」
私がやるよりも完成度が高いハーフアップにされた髪を見ながら、天から二物も三物も与えられてしまう人がいるのだと実感する。
彼の好みの髪飾りで彩を添えられたもう一人の自分をぼんやりと眺めていると、背後から朝の紅茶を飲むか問われたので首を縦に振っておいた。
「甘さは控えめにしますか?」
今日は私の味覚を優先にしてくれるらしい。気遣いができる執事だ。
お姫様抱っこされてリビングに戻り、どこで覚えてきたのか、完璧な手際で紅茶を淹れる彼を見つめる。
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