第4章 お嬢様の仰せのままに
どこに行くのかと悟に聞かれた時、少しでも言い淀むと、包み隠さず話すまでホールドされる。
正直に話したところで、「僕と一緒に行っても困ることはないでしょ?」と付いてくるのが既定路線で、一人で町中をぶらぶらなんて夢のまた夢。
「……で、ゆめかはどこ行くの?」
またか。この展開から逃げられないのか。私がゲンナリしていると、悟が私の顔を覗き込む。
「僕には言えない所に行くとか?」
悟の青い瞳が私を射貫く。
この眼で見られると、心の中を全て見透かされているようで落ち着かない。
私が目を逸らすと、顎を掴まれて強制的に視線を合わせられる。
「別に、悟に言う必要ないでしょ」
悟を真っ直ぐ見てそう答えると、形のいい眉がぴくりと動いた。
青くて綺麗な眼の奥に仄暗い光が灯った気がした。
私の唇の輪郭をなぞる指が、顎から首筋へとゆっくり下りていく。
「ゆめか、どこ、行くの?」
悟の指が私の喉元を撫でて、思わず息を呑んだ。
彼の指が私の首を緩く絞める。
これは彼の最終通告だ。
「……お菓子と限定品のフレーバーティー買ってくるだけだよ」
観念して答えると、悟が私の唇に触れるだけのキスをする。優しいキスに絆されそうになるが、ここで流されたら駄目だ。
「僕が取り寄せしようか?」
悟が甘えるように私の唇に吸い付いてきた。
「あのね……悟のことは好きだけど、そういう感覚は合わないと思う」
私はお店で直接買いたい派。
お店でディスプレイされているのを目で見て楽しんで、中身を想像しながら会計する。
心がときめく感じを味わいながら、幸せな気分で家路につきたい。
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